「滝」は、景色として眺めるために観光で訪れることもありますが、お坊さんや行者の修行の場でもあります。修行者は水の冷たさや、落ちてくる水の圧力に負けずに精神統一をはかり、悟りに至るために滝に打たれるのです。ですから、ここでは「修行」という意味でとらえてください。
　では「〇〇」とは何でしょう。
　例えば、会社の上司に、口うるさく、いやな人がいたとします。それが山田さんだとしたら「山田の滝」でもいいのです。また、近所にどうしてもソリが合わない苦手な人がいたとします。その人が田中さんだったら「田中の滝」でもいいでしょう。つまり、自分の苦手な人を滝に見立てて、滝をやっつけるのです。苦手な上司に対して、「いやだな」と思うのでなく、修行をさせてもらっている、勉強させてもらっている、という謙虚な気持ちになれたら相手も自分は嫌われていないと感じて、関係がよい方向へと動きだすのです。
　人生とは、いやなことや困ったことを乗り越えていくことで、自分の心が強くなり、成長します。言うなれば、人生とは修行の連続なのです。
　人間関係の中で、ソリの合わない人や苦手な人がいたら、「いやだな」と思うでしょう。でも、いったん、そう思ってしまうと、あなた自信も暗くなってしまいますし、本来持ってるパワーも出し切れなくなってしまいます。
　ですから、もし苦手な人と会ったとしても、「いやだな」と思わずに、自分にとっての「修行」として現れた滝だと思いましょう。
　滝のある場所までわざわざ行かなくても、その苦手な人のおかげで修業ができる、そのようにプラスに考えましょう。苦手な人を滝に見立て、その滝を乗り越えようと気持ちを前向きにすることが、「〇〇の滝をやっつけろ！」ということなのです。
　そうすると、「いやだな」と思うことも、プラス思考で受け入れることができるようになるのです。
　会社の上司に限ったことではありません。友人関係でも夫婦関係でも同じことが言えます。相手を変えようと思っても、思い通りに代わってくれるものではありません。あなたの方から相手の存在を容認し、あなたの考え方を変えていくことで、いやだというマイナスの気持ちがプラスの方向へと変化して、あなた自身を変えていくのです。
　それでは、「いやだな」という思いを変えるには、どのようにしたらよいでしょう。
　それには、あなた自身の言葉を変えていくことです。
　「いやだな」とい思うときは、思考もマイナスの方向に向いてしまいます。一方、「好きだな」と思う時は、思考もプラスの方向へ働き始めるのです。
　言葉は、人の思いを左右する力を持っています。「好き」という言葉を使い続けていると、何となくそんなこともあるかな……というように、気持ちが言葉に影響を受けるのです。「好きだ、好きだ」と言い続けていると、いつの間にかその人を自然と好きになってしまうものです。
　「いやだ」というマイナス思考の言葉から、「好きです」というプラス思考の言葉に変えていくと、自分の思いや考えも自然と変わっていきます。
　日頃から、「ありがとう」「うれしい」「楽しい」「感謝しています」「好き」など、明るい言葉、プラスの言葉を使っていると、ポジティブな前向きな心が生まれます。
　一方、「いやだ」「面倒くさい」「つまらない」「憎たらしい」「嫌い」といった言葉は、暗い、マイナスの言葉です。ネガティブな後ろ向きの心しか生まれません。
　このことは、人間関係だけではなく、人生そのものについても同じことが言えます。
　物事がうまく進まなかった時など、誰かのせい、あるいは何かのせいにしてしまうことがあると思います。しかし、あなたの思いや考え方を変えていくとどうなるでしょう。たとえ、相手や状況が変わらなかったとしても、あなたは幸せな方向に気持ちを持っていくことができるのです。
　他人を変えるのは難しいことです。人は容易には変えられないものだということに早く気づいて、自分自身を変えていきましょう。
　幸せな人生とは、向こうからやって来るものではありません。他人の考えや思いを変えようとしたり、状況を変化させることで幸せを求めようとしても、決して幸せにはなれません。人や状況は何も考えずに、自分の気持ちと心を変えることで、今、ここにある幸せに気づき、幸せな人生につながるのです。
　私たちの周りには、普段は気づきにくくても、小さな幸せは意外とあるものです。そんな幸せを上手に見つけることが、人生を幸せにする秘訣と言えるでしょう。