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宮司のいい話

No.226

日本人の感性

 私たちは、大自然に包まれて「生かされて」います。
 大自然の働きに比べて、人間ができることは実に微々たるものだということがわかります。ですから私たちは、自分たちの力で「生きている」のではなく、大自然によって「生かされて」いるのです。
 大自然は、私たち人間が生きていけるように絶妙なバランスを保ちつつ、さまざまな恵みを私たちにもたらしています。
 宇宙に目を向けてみましょう。太陽と地球と月の位置は、いつも絶妙なバランスで維持されています。もしも地球がもっと太陽に近ければ、灼熱の星となってしまい、生命の揺りかごである母なる海は、干上がってしまっていたでしょう。また、もっと太陽から遠ければ、海は氷に閉ざされて、生命を育むことはなかったでしょう。
 もしも、月がなかったらどうでしょうか。ある研究によると、地球の自転は今よりももっと速く、一日の長さが約8時間となり、その結果、地表では時速数百キロの暴風が吹き荒れて、とても生命が暮らせる環境ではないだろうとのことです。
 地球上でも、すべてがバランスよく保たれています。季節の移り変わりによってさまざまな作物に恵まれ、弱肉強食の動物たちの世界においても、ある一定の種が極端に増えすぎないように、食物連鎖のバランスが保たれているのです。
 しかし、高層ビルが立ち並ぶコンクリートジャングルで暮らす大都会の住民たちは、自分たちが大自然の中で生かされているという実感はわきません。人間の生み出した科学技術の素晴らしさを思うことはあっても、高層ビル群から大自然の営みを感じ取ることはとても難しいことです。
 高層ビルの素材を考えてみましょう。鉄やコンクリート、ガラス、プラスチックなど、原料は大自然の中にあるものです。それらを人間が発見し、加工し、組み合わせて作り上げたにすぎません。人間が作り出したものは何一つ存在せず、言うなれば「大自然の恵み」を人間が利用した結果なのです。
 ですから、自然の豊かな土地に住もうと、ビルが立ち並ぶ大都会に住もうと、いずれにしても私たちは大自然の産物に囲まれ、恩恵を受けつつ「生かされて」いるのです。
 私たちと大自然のつながりは、それだけではありません。先祖を代々さかのぼっていくと、やがては私たち自身も大自然の存在と結びつきます。神道は、大自然の神々から生み出されたのが私たち人間であり、この世の森羅万象のすべてが神から生み出されたと教えています。
 では、私たち人間を含め、この世のすべてを生み出した存在は、何のためにこの世界を作り、また私たちから作り上げたのでしょう。このような人間の存在理由についての疑問を持つ人もいることでしょう。
 残念ながら、私たち人間の限られた知性では、その理由を完全に理解することはできません。しかし理解はできなくても、今、この瞬間にも、私たちは生きていて、大自然の恵みを受けつつ生かされているのは確かなことです。
 自らの存在理由を理解できなくても、自分が今、生かされていることに感謝して、過ごすことが大切なのです。

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